ゆりこんぐのブログ

主にゲーム、読書、好きなことをゆったり、時に熱く。お暇な時に読んで頂けると嬉しいです。

明日は、いずこの空の下

アクセス数稼ぎに富士山の写真を載せつつ、東海自然歩道を歩いた話でも書こうと思ったのに。(動機が不純)

 

どうにもこうにもこの本に感動してしまって、気の向くまま感想をぽちぽち。

 

上橋菜穂子先生著作、『明日は、いずこの空の下』

『鹿の王』を読んで以来、眠っていた上橋先生への情熱が呼び起こされてしまい、気付いたら買っていました。

この気付いたら買っているクセ、なんとかしたい。道理で毎日が貧乏な訳だ。

 

上橋先生の作品を読む度に思うのが

 

「どうしたらこんなに素晴らしい物語を書けるんだろう」

ということ。

 

子どもの頃の自分に贈り物をすることができるのならば、

「世界は良いものではないけれど、キミの思っているほど悪いものでもないから、しっかり生きろよ。」

というメッセージと守り人シリーズ全巻ですかね。

 

守り人シリーズ」の名前だけは聞いたことがあって、子どもの頃「読みたいなぁ」ってずっと思ってた。憧れにも近い気持ちがあったように思う。

ちょっと冴えない、友達のあんまりいない地味でどんくさかった(それは今もか)小学生だったあの頃。

楽しみと言えばTVゲームか(この頃からゲームが好きだった)、月刊「りぼん」の発売か、歩いて20分くらいの場所にある小さな小さな図書館で本を読むこと。

 

でっかい切り株の置物と謎のスズメバチの巣(田舎の軒下には大抵スズメバチの巣が飾ってある。なんでだ。)が置いてある図書館。

大好きな司馬作品に出会ったのもここでした。

 

でも、ここには置いてなかったんだよ。

守り人シリーズ

 

「ゲト戦記」も「指輪物語」も「果てしない物語」もあったのに。守り人シリーズは置いてなかったんだよな。

探しても探しても見つからなくて、図書館の端末で調べたら「中央図書館にあります」って書いてあった。

 

中央図書館て簡単に言うけれど、歩いて片道2時間以上かかるからな。バス代だけで往復千円以上かかるからな。田舎のインフラ舐めんなよ。

 

大人になって、車が手に入って、行動範囲がとんでもなく広がって、立ち寄った本屋さんで守り人シリーズを見た時は感動したなぁ。

あんなに欲しかった、でも手に入れることのできなかった本がここに・・・!

 

もちろん、買いましたよ。全巻。

 

大人になって良かったことは、自分の好きな場所に行けるってのと、好きなものを買えるってことですね。

 

子どもの頃、読みたくて読みたくて、でも読めなくて、大人になってから自分の稼いだお金で買って、ようやく出会えた上橋先生の作品たち。

 

出会いは大人になってからだったけれども、読むたびに魅了され続けてきた上橋先生のルーツがここに詰まっていて、うふーん、ファンとしては大満足な一冊です。

 

本書では、上橋先生が「物語の持つ力とは、ファンタジーとは」ということに如何に真摯に向き合ってきたのか、が窺い知れます。

 

これだけの想いがなかったら、あんなに素晴らしい作品は書けないよなぁ・・・と妙に納得してしまったり。

 

堅苦しくて難しい話はほとんどなくて、上橋先生のお茶目さに「うぷぷぷ、くすくす」と自然に笑いが溢れたり。時にその無鉄砲さにヒヤヒヤしたり。勇敢さに驚いたり。

 

わたしが、上橋先生の作品を読む度に感じていたのは

「人間として生きる上でどうしても避けられない奥底に流れるような哀しみ」

「それでもどこかに希望はあるのではないか」という仄かな灯火のような「希望」。

 

それを痛い程に感じたのは後半に出てくる「フロンティアの光」というお話。

 

いつも感じていた希望はここから出てきたものだったんだ、と胸が熱くなりました。