こんぐまる、船出する
ぼくのなまえはこんぐまる。
鋼の魂を持った侍に憧れて強くなるために旅に出た。
空の綺麗なこの日。
とうとうぼくは。
れんだーしあへ旅立つことに決めた。
れんだーしあ行きの船に乗ってしまったら。
しばらくは戻ってこられないかもしれないから。
この景色を覚えておこうと思う。
生き別れになってしまったまゆげねーちゃんとは、きっとまたどこかで会えると思うんだ。
旅路の果てに。
初めて乗るグランドタイタス号はとってもひろくって豪華だった。
いつも外から眺めていたから、不思議な感じがする。
とうとうこの船に乗る時が来たんだ。
紅い絨毯がふかふかしていて、この間、自分で作ったチェックのラグを思い出した。
ゆうりさんの言う通り、ラグは不良債権なので、玄関マットに使っている。
この倉庫、何がしまってあるんだろうって、よくよく見たらお酒だった。あきまさんが喜びそうだ。
乗り込んだのは昼間だったのに、甲板に出たらもう夜だった。夜の海は風が冷たい。
ぼくは晴れた夜空に浮かぶ白い雲が好きだ。
月明かりに照らされてほんのりと淡い光を放つところが綺麗で。
風に流されてゆくさまも好きだ。
あの雲を見ていたら、じゅれっとの街を思い出した。裁縫ギルドのマスター、元気かなぁ。
甲板では釣りができるので、しばし釣りを堪能する。
たまたま居合わせた人も釣りをしていた。あんまりお話できなかったけれど、応援しあった。応援と「ありがとう」の繰り返し。
ただそれだけだったけれど楽しかった。
あの人もこれから、れんだーしあへ旅立つんだろうか。ぼくらはまたどこかで出会うんだろうか。
船の中を歩き回っていたら疲れたので、酒場で少し休憩する。
グランドタイタス号の酒場は静かだった。
いつもぼくはめぎの酒場に行くから、こんなに静かな雰囲気は初めてだった。
めぎの酒場は、賑やかで好きだ。
酒場で休んだあと、操舵室へ向かうと、あんなに苦労して手に入れた羅針盤が誰かに盗まれてしまった。
犯人はこのキラキラした瞳が印象的な赤いモヒカンの男。
あんまりにも瞳がキラキラしていたから、何か事情があるのかと思ったら、ねるげるの手下だった!
人は見かけによらない。
ぼくの腰間の秋水が閃き、魔物を・・・!
と言いたいところだけど、このモヒカンはクロウズさんが呪文で焼いちゃった。船の上でメラゾーマはどうかと思う。
それにしてもこの人は何者なんだろう。
れんだーしあへ向かうのが目的だって言ってたけど・・・。
グランドタイタス号は迷いの霧を進む。
ぼくはすることもないので、客室でゴロゴロ。
ベットがふかふかでさいこうだぁ。
目が覚めたら、おかしな浜辺に到着した。
ここの人たちはみんなイカレポンチなことを平気で言う。
こんな白い髭を生やしたおじいさんが、まるでこどものようなことを言うんだ。
空の色も少し変だ。
遠いところまで来てしまった。
浜辺に打ち上げられた船の残骸が、薄い空の色が、ひゅうひゅうと吹く風の音が、ものかなしくて胸がきゅっとなる。
こわいのと、こころぼそいのとでぼくの胸毛としっぽが、少しだけ震えた。
とうとうこんぐまるがレンダーシアの土を踏みました!